漫画『風街のふたり』のレビュー・感想!1コマずつ味わいたいノスタルジックな作品

漫画『風街のふたり』レビュー・感想 サムネイル 漫画

漫画『光と窓』を読んでファンになったカシワイという漫画家が、『風街のふたり』という新作を連載しています。

1コマ1コマが美しくて、どのシーンを切り取って額縁に飾ってもよいくらいです。本作の魅力を紹介します。

『風街のふたり』のあらすじ

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孤独な絵描きの老人と友達がいない少女。世界に馴染めない2人が世界の愛し方を知る物語。

引用元:webアクション

『風街のふたり』は孤独な絵描きの老人、そして友達がいない少女の2人が主人公。

老人は坂道で真っ赤なリンゴを広い、それをモチーフに絵を書いていました。するとリンゴの落とし主である少女が老人宅を見つけ、2人の交友関係が始まります。

基本的には会話劇のような構成です。webアクションで第1話が読めます。

>>『風街のふたり』Episode.1 | webアクション

作者・カシワイ

作者のカシワイは漫画家・イラストレーター。過去作に『107号通信室』や『光と窓』などがあります。

柔らかくて細い線が特徴的です。線が細いのでスッキリとした印象の絵ですが、無機質というわけではなく、手書きならではの温かみが感じられます。

『風街のふたり』はフルカラーなのですが、パステルカラーが基調となっていてノスタルジックな雰囲気。個人的にとても好きな色合いでした。

ちなみに線画はボールペンで描いているそうです。(本人のツイートによれば。)

>>カシワイの公式ホームページ

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『風街のふたり』の魅力

『風街のふたり』を読んで感じた魅力を紹介します。説明的なセリフがなく、行間や絵をじっくりと味わうことができる素敵な漫画です。

1コマ1コマが一枚絵のよう


冒頭でも触れたとおり、1コマ1コマが美しくて一枚絵のようです。どのコマを額縁に入れても立派な作品になると思います。

フルカラーだからこそ抱く感想かもしれません。

街並みや人物の服装はパステルカラーで描かれていることが多く、爽やかな色合いが「風街」ぽさをより際立たせています。

海や夜空の描写では反対にクッキリとした色使いで、「空気の透明度が高い」ように見える素敵な青色です。

そして舞台はクロアチアやスロベニアのような異国情緒あふれるレトロで美しい街並み。

ちなみに作中の時代や場所は不明でラーメンを食べる描写もあります。おそらくは特定のモチーフの場所があるというよりも、作者の頭のなかにあるファンタジーな世界観が描かれているのではないでしょうか。

老人の色あせた記憶がなんとも切ない


少女との会話のなかで、折に触れて老人の色あせた記憶が刺激されていきます。

いまは孤独な老人にも、かつて友人と過ごしたときや、恋人らしき女性とピクニックをしたときの思い出がありました。

老人が思い出すのはどれも何気ない日常の記憶。しかしかつて誰かと過ごした思い出は星屑のようにきらめき、当たり前の日々の大切さと美しさを感じさせます。

たとえば第2話では友人と流星群を見に行ったときの記憶が描かれました。夏の夜、静かな森のなか、蒸した空気と草木の匂い。

読者にとっては知らない景色のはずなのに、どこか懐かしさを感じる描写になっていて、なんだかノスタルジックで切ない気持ちになりました。

少女×老人に萌える


『風街のふたり』は、純粋無垢な少女と無口な老人の組み合わせです。

世代間ギャップの大きいカップリングは、なんとも萌えます。(べつにこの2人が恋したり、家族愛に芽生えたりといった展開となるわけではありません。)

たとえば散歩ひとつにしても、少女にとっては“新発見”の景色でも、老人にとっては“再発見”の景色なのです。

ずっと置きっぱなしだった花瓶に花を生けたり、古びた額縁に色を塗り直したりと、少女の行動はまるで「止まっていた老人の時間を再び動かしている」ようにも思えます。

読んでいるこちらまで、日々のふとした喜びや小さな感動を思い出せるような気がして、ほっこりと温かい気持ちになれる漫画です。

『風街のふたり』はどんな人におすすめ?

最後に『風街のふたり』はどんな人におすすめかを紹介します。

映画『めがね』が好きな人

個人的には『風街のふたり』を映画にしたらきっと映画『めがね』のようなテイストになるのでは……。と思います。

キレイな海のある街。小さな宿屋に「たそがれる」ことが得意な人たちが集まり、ゆったりとした時間が流れるなかで、せかせかとした主人公が徐々に変化していく様子が描かれます。

人と人との優しい関わりあいによって起こる心情の機微が描かれている点が、『風街のふたり』と似ていると思いました。

2作ともに「心のゆとり」というか、忙しない日常のなかで見失いがちな「ふとした幸せ」を思い出させてくれるような作品です。

町田洋の漫画が好きな人

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町田洋は『夜とコンクリート』や『惑星9の休日』などの著者です。

絵柄やストーリーの方向性がそこまで似ているわけではありませんが、優しく繊細なセリフや、行間をじっくりと味わう感覚が似ていると感じました。

逆に『風街のふたり』が好きだった人にも、町田洋をおすすめしたいです。

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