『ちいかわ』はなぜオトナに人気なのか考察!可愛いだけじゃない世界観に引き込まれる

『ちいかわ』はなぜオトナに人気なのか サムネイル 漫画

イラストレーターのナガノ作『ちいかわ』――“なんかちいさくてかわいいやつ”の日常を描いたほのぼの作品です。

絵本のような可愛らしいキャラクター、そして絵のタッチで、ストーリーや会話の内容もなんだか癒やされる“ゆるふわ”な雰囲気があります。

一見しただけでは子供向けの漫画・アニメだと思われるでしょう。

しかしよくよく『ちいかわ』を読んでいると、ふと垣間見える恐ろしい世界観――。

そんな作品の性質上、“なんとなくキャラが好き”というライトなファン層から、いわゆる“ガチ考察勢”のファンまで、幅広いファン層を獲得しています。

いったいなぜ『ちいかわ』はオトナの心をつかむのでしょうか。その理由を考察していきます。

『ちいかわ』のはじまり

『ちいかわ』アカウントは2020年1月1日から開始

『ちいかわ』の概要についてWikipediaの記載を見てみましょう。

2020年よりTwitterにて連載されており、2021年に単行本化。

参考:ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ|Wikipedia

しかしTwitter上では、2020年以前から『ちいかわ』が認知されていたと思われます。その根拠となるのが以下のツイート。

こちらが2020年1月1日のツイートで、本アカウント最初の投稿ですが、リプ欄にはこのキャラを「ちいかわ」と呼ぶ声が見られます。

また以下のツイートは『ちいかわ』の作者・ナガノによる投稿で、日付は2020年1月19日です・

少なくとも2020年以前から『ちいかわ』は存在していて、多くの人に認知されていたようです。

がっつりアカウントを移行したためか、ナガノのアカウントには『ちいかわ』の画像投稿はほとんど残っていませんでした。

唯一見つけられたのは「うさぎ」の投稿です。

こちらのリプ欄を見ると、「栗まんじゅう」という名前が見られることから、すでにいくつかの人気キャラクターは認知されていたようです。

はじめはストーリーがなかった?

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『ちいかわ』は各話1ページのマンガ形式ですが、はじめはストーリーがなかったみたいです。

第1巻の1番はじめに収録されているエピソードはこちらの内容となっています。

このように『ちいかわ』は、はじめは「こういう風になってくらしたい」という願望のような内容が描かれていたようです。

そしてはじめて漫画形式で描かれるのがこちらのエピソード。

ちいかわとうさぎによる、ただただ可愛いエピソード。ピザまんを食べたいちいかわと、独り占めしようとするうさぎの追いかけっこを描いています。

はじめて言葉を話すキャラクターが登場

はじめて人語を操るキャラクターとして描かれたのは、こちらの「キメラ」です。

それまではちいかわ、うさぎ、栗まんじゅうと言葉を喋らないキャラクターたちの穏やかな日常(?)が描かれていました。

それだけにこのエピソードは衝撃的で、「ホラー回」と称されることも。

またキメラが「こんなになっちゃった」と発言していることから、元々はちいかわたちのように、可愛らしい姿だったと考えられます。

ちいかわやうさぎも、いつかキメラに変化してしまうのではないかと考察&心配する人も多いのではないでしょうか。

ハチワレの登場でストーリーが本格化

こちらはハチワレの初登場回。『ちいかわ』はハチワレの登場によってストーリー性が増していきます。

キメラは言葉を話しますが、ちいかわにとって害を与える存在として描かれました。

しかしハチワレはちいかわの友達として登場していて、かつ言葉を話せるので、読者にとってちいかわたちの物語の内容を分かりやすく伝えてくれる存在になっています。

【考察】『ちいかわ』がオトナに人気の理由1.ベビースキーマ

ベビースキーマとは

 赤ちゃんの画像

「ベビースキーマ」とは赤ちゃんに固有の身体的特徴のことで、人が赤ちゃんに対して本能的に「かわいい」と感じる原因だと言われています。

ベビースキーマとして挙げられる身体的特徴はおもに以下のとおりです。

  • 顔の下半分にぱっちりとした目がある
  • 頬がふっくらして顔が丸みを帯びている
  • おでこが突き出している
  • 体に比べて頭が大きい
  • 手足が短い
  • 動きがぎこちない

『ちいかわ』に登場するキャラクターはまさに“赤ちゃん的”なので、人々が本能的に「かわいい」と感じるのではないでしょうか。

ベビースキーマによって「かわいい」と感じることで、人は「守りたい」「保護したい」「近づきたい」「側にいたい」などの感情を持つと言われています。

とくにちいかわは泣き虫で、言葉もろくに話せないので、赤ちゃんを見たときのように無意識に養育的反応をしてしまうオトナが多いのではないかと筆者は考えています。

参考:赤ちゃんの「かわいさ」には人種や個人の好みを超えた共通の特徴があった|ナゾロジー

ベビースキーマだけが理由とは考えづらい

しかしサンリオ作品や日本の漫画作品においても、ベビースキーマの特徴をもつキャラクターが多いため、『ちいかわ』に限った話とは言えません。

また男性(とくに若い男性)は、ベビースキーマ的な特徴への反応が薄く、「かわいさ」の高低を認識しづらいという説もあります。

某メディアの調査によると、『ちいかわ』アカウントのフォロワーは約4割以上だそう。

ほかの「かわいい」キャラクターのアカウントに比べても圧倒的に男性ファンが多いと言えるので、ベビースキーマのみを『ちいかわ』人気の理由として挙げるには根拠に乏しいかもしれません。

そのあたりは、後述する「感情移入」や「世界観」も組み合わさっての人気だと考えられるのですが、ここではもうすこし『ちいかわ』の「かわいらしさ」を掘り下げてみたいと思います。

ちいかわたちの“守りたい”キャラクター像

『ちいかわ』に登場するキャラクターは、“子供そのまんま”のような特徴を持っています。

  • ちいかわ:泣き虫、人見知り、拙い言葉
  • ハチワレ:のんき、繊細、お兄ちゃん気質で面倒見がいい
  • うさぎ:自由きまま、テンション高い
  • ラッコ:みんなといるときは面倒見のいいお兄ちゃん、1人のときは可愛い一面も
  • モモンガ:わがまま、だけどなんか憎めない
  • 栗まんじゅう:おっさんくさい
  • シーサー:とにかく素直、がんばり屋さん
  • カニ(古本屋):とにかく優しい、控えめ

たとえば幼稚園にいる子供たちを想像してみてほしいのですが、「こんな子供いるいる」と感じませんか?

放っておくとすぐにどこかへ行ってしまう子(うさぎ)、他の子のおもちゃを取ってしまうわがままな子(モモンガ)、なんだか大人びているのがかえって愛らしい子(栗まんじゅう)などなど……。

子供たちが遊んでいるそばにいる親目線・保育士目線のような、「この子たちを見守りたい」という感情が、『ちいかわ』を見ていると自然と刺激されるように思います。

栗まんじゅうについては「近所のあんちゃん」とも言えるかもしれません。お酒を飲んでいる栗まんじゅうをマネして、ちいかわとハチワレがジュースを飲んで「ハーッ」と爽快な顔をするシーンが愛おしいです。

子供とオトナの社会

手をつなぐオトナと子供

「子供や赤ちゃんを見ると可愛くて反応してしまう」

「つい、あやしたり触ったりしたくなる」

「けれどご時世柄、他人の子供に近づくのははばかられる」

こんな経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。

逆に親からすると、「知らない人が我が子に興味を持つのがイヤ」と感じることも多いでしょう。実際に、子供をターゲットにした犯罪が世の中には溢れています。

しかし日本でも、地域や社会全体で子供たちを育てるという意識がありました。

筆者は田舎出身のためかそういう文化が多少残っていて、近所の知らないおじさんに叱られたり、「おかえり」と言われて「ただいま」と返事をしたり、可愛がられてお小遣いをもらったり、そんな経験があります。

昭和までの頃は、よりそういう文化が色濃かったと聞きます。近所の人に子供を預けたり、知らないオトナと一緒に遊んだり、という話を聞いたことも。

こんな記述を見つけました。

アフリカのカメルーンで太古の人類の生活スタイルを受け継いで暮らすバカ族は、子育てにも太古のスタイルを残しているそうです。母親は生後3ヵ月の乳飲み子を仲間に預けて森へ薪拾いに出かけ、その間に赤ちゃんが泣いたら、あたりまえのように仲間が自分の乳を与える。そのおおらかな子育てスタイルは「共同養育」と呼ばれ、人類が進化の過程で身につけたものだといいます。

参考:みんなで育てる|無印良品 くらしの良品研究所

昔から人類は「みんなで協力しあって子供を育てる」という生存戦略によって社会を築いてきたのではないでしょうか。

現代日本では核家族化が進み、ご近所付き合いも減ってきているため、なかなかイメージしづらいかもしれませんが、この「共同養育」は本能的に備わっている仕組みだと言われています。

ちいかわたちが遊んでいるのを見守りたいと感じてしまうのは、当然のことなのかもしれません。

【考察】『ちいかわ』がオトナに人気の理由2.感情移入・共感

『ちいかわ』は、じつは現実世界の「あるある」が詰め込まれていて、それによって感情移入や共感を生んでいるのではないでしょうか。

オトナがビールを飲んでいるのを見て真似たり、体よりも大きなプリンを食べてみたいと夢見たり……。そんな誰もが思い当たる経験に、思わず共感的になって『ちいかわ』を楽しんでしまいます。

逆にちょっと悲しくなったり、うまくいかなかったりするエピソードも、なんだか共感してしまうものばかり。いくつか印象的なエピソードを挙げてみます。

仲のいい友達と同じ試験を受けて片方だけ落ちたときの気まずさ


世知辛いような気もしますが、『ちいかわ』の世界には“労働”があります。

ちいかわやハチワレも、草むしり、討伐、採集などの労働によってお金を稼いでいるのです。そして報酬をアップさせるには「検定」で資格をとる必要があります。

ちいかわが草むしり検定の勉強をしているのを知って、ハチワレは「一緒に合格したい」という純粋な気持ちから、自分も勉強を始めます。しかし……。

なんとハチワレだけ受かってしまいました。露骨に落ち込むちいかわを見て、ハチワレはなんと声をかけていいのかも分からず、2人は無言のまま帰路につくのでした。

その夜のハチワレは……。

「ぐう~!分かる~!」「2人(2匹)ともそんな悲しい顔しないで~!」

なんだか気まずくて、励ましたいけど嫌味になっちゃいそうで、なんだかもう仲良くできないような気もして……。

いくら仲のいい友達でも、こういう場面はありますよね。学生時代の経験を思い出してしまいます。

ちなみにその後。

ハチワレをお祝いしてくれるちいかわ。これからも前向きな2人(2匹)でいてほしいです!

今回紹介した投稿以外にもエピソードが連なっているので、気になった方はぜひ単行本で読んでみてください。

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ラーメン二郎に初めて入店するときの敷居の高さ

ラーメン二郎って「独特な注文方法」や「こだわり強そうな店主」のイメージがあって、なかなか入店するハードルが高くないですか?(筆者は怖くてまだラーメン二郎に行ったことがありません)

『ちいかわ』の世界には、二郎ライクな「郎」というお店があります。いざ入店しようとしたとき、ちいかわが不安に襲われてしまいました。

二郎に限らず、はじめて入店するブランドショップやおしゃれなカフェでも緊張してしまう経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

ちなみにハチワレとちいかわはその後、「郎」について勉強を重ね、ついに……。

無事「郎」を完食できました!

勇気を出して1回入店してみたら、少しハードルが下がったみたいです。よかったね!嬉しいね!

欲しいものはカンタンには手に入れられない

欲しいものを買うにはお金が必要だし、お金を得るためには働かなくてはいけないのが世の常ですよね。ちょっとずつやりくりして、お金をためて、やっと欲しいものが手に入ったときの喜びは計り知れません。

ハチワレの欲しいもの、それは「カメラ」でした。財布の中身を数えるハチワレ――しかしカメラはまだ買えないみたいです。

(というか、こんなにファンタジー色の強い世界観なのに、資本主義社会なんですね、なんだか世知辛いような……。)

あるとき、 うさぎが不思議な杖を持ってきました。ハチワレもこの杖を振ってみることに。

なんと、前々からハチワレが欲しがっていたカメラが現れたのです!早速試し撮りするハチワレでしたが……。

杖を使ったうさぎとハチワレの姿がみるみる変わってしまいました。なんと恐ろしい副作用なのでしょうか。

ちいかわが杖を折ったことで、なんとか元の姿に戻れた2人(2匹)。

カメラは消えちゃったけど、あらためて貯金を決意する健気なハチワレでした。頑張れ!ハチワレ!

ちなみにその夜、今日の出来事を振り返ったハチワレは……。

「うんうん!大切な友達がきえちゃわなくてよかったね!」「今度はちゃんとしたカメラで写真取ろうね!」

最後にはおいしくラーメンを食べるちょっとのんきなハチワレの姿に、少しほっとするエピソードでした。

【考察】『ちいかわ』がオトナに人気の理由3.ふしぎな世界観

『ちいかわ』の不思議な世界観は、“ガチ考察勢”と呼ばれるファン層を生み出しています。。

考察のしがいがある複雑な世界観も、『ちいかわ』にオトナのファンが多いひとつの理由ではないでしょうか。

いくつか気になる世界観を紹介していきます。

ちいかわたちの個性

ちいかわたち(ちいかわ族)は、メインキャラクター以外にもたくさん存在しているようです。

ときどきデザインがないキャラクター、いわゆる「モブ」が描かれます。

体の輪郭や耳の形はメインキャラクターと似ているようなフォルム。

考察ポイントは、物語のなかでモブからメインキャラクターに昇格したキャラクターがいること。それが「カニ」(古本屋)です。

モモンガと遊んでいるこのモブ。古本屋を営んでいる名もなきキャラクターでした。しかし……。

モモンガから渡された「カニ」のアクセサリーをつけたところ、表情がついたのです。

このことから、以下のような推測ができます。

  • ちいかわたちメインキャラクターはもともとモブだった
  • ひょんなキッカケから個性を得た個体がちいかわたち
  • これからもモブがメインキャラクターになる可能性がある

もしかしたら『ちいかわ』で描かれているより前の段階では、ちいかわやハチワレ、うさぎも、モブのなかの1人(1匹)に過ぎなかったのかもしれません。

そしてカニのように、ひょんなことから個性的な特徴を得ていまの姿になったのかも……。

今後もモブからメインキャラクターに昇格する可能性があるので、モブからも目が離せません。

「こわいやつ」とちいかわの関係

ちいかわたちの存在を語るうえで外せないのが「こわいやつ」の存在です。

しばしば討伐の対象として虫や巨大生物が登場します。

ちいかわに襲いかかってきたキメラが「こんなになっちゃった」と発言していたことから、もともとはちいかわたちと同じような可愛らしい姿だったと考えられるので、もしかしたらほかの「こわいやつ」もちいかわたちのような姿から変化したのかもしれません。

ネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、モブだった“あのこ”も……。

「こわいやつ」がどのようにして生まれ、どのようにして暮らしているのか、まだ多くは謎に包まれていますが、ちいかわの世界には「形態変化」のような概念があるのかもしれません。

鎧(よろい)さんの存在

鎧(よろい)さんは、ちいかわたちの世界で大人(?)として描かれる唯一の存在です。

ちいかわたちの仕事を管理したり、お店を経営したりするのが鎧さんの役割のようで、ちいかわたちを暖かく見守る存在のように描かれることもしばしば。

しかし鎧さんにも多くの謎があります。

『ちいかわ』第4巻特装版の付録「ちいかわ豆ずかん」では、この金色(?)の鎧さんは「偉い鎧さん」と紹介されていました。

ポシェットの鎧さんが、ちいかわたちの家ですき焼きの作り方を教えおわって、帰るところのシーンです。

「仲良くしすぎだ」

ってどういうことなのでしょう?鎧さんたちのあいだでは、ちいかわたちと仲良くしてはいけない、というルールがあるのでしょうか。

だとすれば、それはなぜなのでしょう……。

ちいかわたちと鎧さんはまったく別の種族で、「こわいやつ」になる可能性があるちいかわたちを管理するための存在、だったり……。だとするとちょっと怖いですね。

もしくはこんな構図かもしれません。

ちいかわの変化予想図

  • ちいかわの世界では、形態変化の最後に「鎧さん」もしくは「こわいやつ」となり、その後は変化しない。
  • 形態変化の可能性があるのは「モブ」もしくは「ちいかわ(たち)」。
  • 鎧さんたちはモブやちいかわたちが「こわいやつ」にならないように成長するのを助けるための存在。

いずれにしても、ちいかわたちが「こわいやつ」に変化する可能性を把握していて、情が入るときちんと討伐できない可能性があるから一定の距離感を守っている、という説がしっくりきますよね……。

今後、ちいかわたちや鎧さんたちの関係性について明かされていくことを楽しみにしましょう。

まとめ:『ちいかわ』はオトナだからこそ楽しめる要素がいっぱい

たとえば自分が小学生だったとして『ちいかわ』を見ても、「なんか可愛いキャラクターものの漫画(アニメ)」くらいの感想しか持たなかったと思います。

しかしある程度の年齢を重ねているからこそ楽しめる要素があると感じました。

  • オトナが守りたい子供像
  • ちょっとシリアス&不気味な世界観
  • 考察要素

最初の数話は「よくわからない漫画(アニメ)」だと感じるかもしれませんが、ストーリーを追っていくと徐々にのめり込んでいってしまいます。

『ちいかわ』が気になっているけれどまだ手を出せていないという方は、ぜひこの機会に。

ちなみにアニメ版『ちいかわ』はU-NEXT(PR)、Amazonプライム(PR)、FODプレミアムなどの動画配信サイトで視聴することができます。

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