【9話まで】『Tシャツが乾くまで』の感想・考察

Tシャツが乾くまで サムネイル その他

次回9/11(金)に最終回(#10)を迎えるTBSドラマ『Tシャツが乾くまで』。

物語序盤は、バスの転落事故に巻き込まれた夫婦の悲しみと寄り添い、お互いのパートナーの秘密に迫っていく謎解き要素を中心とした展開が続きました。

しかし中盤からは一変。遺体が見つからなかった充(みつる/松山ケンイチ)は生きていて、しかもあえて帰宅していないことが判明。

さらに8話ラストから9話にかけて、咲子(さきこ/蒼井優)が失踪するという波乱の展開に。

拙筆ながら、9話までの内容について感想・考察を書いていきます。

8話まで:理解できないものを受け入れるということ

充の反論

6話ラストでついに帰宅した充。7話から8話にかけて彼が失踪するまでの経緯や、園田あずさ(夏帆)との関係について明かされていきました。

充(みつる)にはもともと失踪癖があること、園田あずさとは不倫関係ではなかったこと、などを咲子と園田樹生(いつき/中島歩)の前で説明します。

あまりに淡々とした口調だったこともあり、不倫の疑いは完全には晴れていない様子。

それに対して、「咲子と樹生の関係は不倫ではないのか」「自分たちには疑いをかけるが、咲子と樹生が不倫関係でないことは証明できるのか」と反論しました。

反論に対してどう思いますか?

この時点では、充に対して「そんな言い方しなくても」とか、「なんだコイツ」とか、充に対して不快感を抱いていた方も多いのではないでしょうか。

感情的に受け止めると、というか、人としてどうか、という視点で見ると、

  • あずさが亡くなったこと
  • それを知ったうえで充は1年間も失踪していたこと
  • その遺族に対する話の場であること

などを踏まえると、たしかに充の主張は「コイツなんやねん」「もっと申し訳なさそうにしろや」という不快感があったかもしれません。(笑)

 

ただ、あくまで不倫への疑いに対して事実ベースで考えるとすれば、

  • 不倫関係“ではない”証拠って言われても……
  • 咲子と樹生だって同じような関係に見えるけどそれも不倫ってこと?
  • そもそも男女で話してたら浮気って、小学生じゃないんだから……

みたいな意見も個人的には分かります。とくに「不倫した証拠」ならまだしも、「不倫していない証拠」なんて――。「信じてくれ」と言う以外なくないですか?

参考:消極的事実の証明|Wikipedia

 

とはいえ、「男女2人きりで小旅行なんて浮気に決まってるじゃん」という一般的な目線も分からなくはありません。

充もそれを分かっていたからこそ、「どうせ理解されないだろうけど」という話し方をしていたわけです。

他の登場人物の「理解しがたい関係」

充とあずさの他にも、一般的には理解されない可能性のある関係を、他の登場人物が抱えているのにみなさんも気がついたかと思います。

咲子の同僚:大井田千鶴(ちづる/臼田あさ美)

妻帯者の彼氏がいる。彼はいわゆるオープンマリッジらしいので、誰にも迷惑をかけないならこの関係もOKと思っている。

樹生の同僚:佐竹和明(かずあき/ラバーガール 飛永翼)

元カノと友人関係が続いていて、たまに飲みにいく。どうせ信じてもらえないと考え、妻には「友達と飲みに行く」と伝えている。

 

それぞれの関係に対して咲子と樹生は、「いやそれどうなの?」的な反応をしていたような気がします。

では一方で、千鶴や佐竹から見て、咲子と樹生の関係はどのように見えていたのでしょうか?

 

リリー・フランキー演じる古本屋の店主がいつだか樹生に言っていたように「奥さんが亡くなったのに次の女性を見つけるなんて、切り替え早いですね」みたいな、そういう見え方だったのですかね?

理解できなくて当たり前、だけど「受け入れる」ことはできるのでは?

結局のところ、人間性だって人間関係だって、当事者にしか本当のところは分からないし、傍から見たら理解できなくて当たり前です。

夫婦になって、家族になって、一緒に暮らしていたとしても、生まれてから十数年あるいは数十年はまったく別の人生を歩んできた人なんですから、私がいう「浮気」とあなたがいう「浮気」は、言葉自体は一緒でも意味は厳密には異なるはずです。

たとえば「友達」という関係性についても、私と人物Aとの友達関係と、あなたと人物Bとの友達関係とでは、まったく違うはずじゃないですか。これまでしてきた会話、ケンカ、相手に抱えている感情だって人それぞれですよね。

 

充の失踪癖だってそうです。

傍から見たらただの「失踪癖」ですが、充はそれがいちばん伝わりやすいから「失踪癖」という言葉を使っただけで、彼にとってはそれが自分の一部で、彼にとってはそれが当たり前のことです。

 

カボチャ嫌いは理解できる。私にも嫌いな食べ物はあるから。

でも失踪癖は理解できない。私には失踪癖はないから。

 

これが失踪癖だと分かりづらいかもしれないので、自分の趣味やこだわりに置き換えてみるといいかもしれません。

  • なんでアプリやゲームにそんなに課金するの?
  • あなたの推し、何がそんなにいいの?
  • そんなに靴ばっかり集めてどうするの?

 

自分にとって当たり前のことを、自分ともっとも近しい相手である妻や夫に言われたら悲しくないですか?長く付き合うことができるのか心配になりませんか?

理解できなくて当然、理解できないことも含めて相手を受け入れる――。個人的にはそんな夫婦関係を築けたら理想的なのでは?と思っています。

9話まで:「言いたくないことは言わなくていい」のか

8話から状況は一変、今度は咲子が家を出ていき、行方が分からなくなります。

充は咲子に近しい人物を集めて、それぞれから見た咲子の人物像を聞きますが、みんながみんな、彼女に対してまったく違う人物像を描いていました。

充は話を聞いたうえで咲子の居場所を突き止めようとしますが、じつは自分以外のみんなは、咲子から連絡を受けていて、無事に過ごしていることを知っていたのです。

9話冒頭で千鶴をとおして咲子の居場所を知った充。彼女のもとへ向かいますが、咲子とすれ違い――。

咲子も秘密を抱えていた

咲子が家を出て身を寄せていたのは、過去に結婚していた元夫・篤彦(あつひこ/井ノ原快彦)が住む千葉の家だった。

充は篤彦のもとへ向かうも、咲子は彼から逃げるように千葉を出る。

結局、充と咲子は話し合いの場を設けることになったが、咲子はこれまで4回、別の人と結婚・離婚を繰り返しており、充は5人目の夫だった。

咲子もまた、過去を隠していたのだ。

「言いたくないことは言わなくていい」

これまで咲子と充の夫婦関係をあらわすルールとして度々登場していたセリフ。

「嘘はだめ。けど、言いたくないことは言わなくていい」

このルールがあることで、充は失踪癖やあずさとの関係について「言わなくてもいい」という救いになり、事故が起こるまでは平穏に過ごすことができていました。

 

ところが咲子の秘密が明らかになることで、咲子自身も「言いたくないことは言わなくていい」というルールのおかげで、過去の離婚歴については打ち明けなくて済んでいたことが分かります。

結局のところ「お互いを理解しているつもり」だった夫婦が、あらためて自己開示したら「なんやこの人ぜんぜん知らんことばっかやんけ」という状態になっている。

単純にそれだけの話なのだけれど、お互い、「理解されがたい」と自認すること(失踪癖/離婚歴)のせいで、その後の生活もぎくしゃくしてしまったのでしょう。

 

「言いたくないことは言わなくてもいい」というルール。表面的にはお互いに気楽に過ごせそうな、夫婦関係を長く続けるための金言のようにも感じられます。

一方でこのドラマで描かれる充と咲子の物語は、「言ってもどうせ理解してもらえないだろう」という考え方によって生まれた、「お互いを知らなさすぎたことによるすれ違い」だと言えるのではないでしょうか。

 

だからこそ私は、「完全には相手を理解できない」という前提で「それでも相手を受け入れる」ことが愛であり、理想の夫婦関係だと思うのです。

 

最初からお互いの事情を把握していたら、充と咲子、2人の性格ならきっとお互いを受け入れ合うことができていたのではないでしょうか。秘密で失踪することもなく、あずさも事故に巻き込まれなかったのではないでしょうか。

最終回に救いはあるのか

9話のラスト。咲子の「今までありがとう」という言葉で幕が閉じます。

 

個人的にはこのまま2人が別れてしまったら、救いがないなぁと感じてしまいそう。

すべてさらけ出した2人が、「やっぱり私たち理解しあえないね」で終わったら、いたたまれなくないですか?

だってそんな人は、この先どんな人と出会ったってきっと理解してもらえないし相手を理解できないじゃないですか。

 

2人がお互いに過去も人間性も受け入れて、これまでの件を乗り越えて、本当の夫婦になれたらハッピーエンドなのかなと思っています。

どうでしょう。

 

最終回も楽しみです。

 

p.s.

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